災害ボランティア活動について
平成28年熊本地震で被災した方々にお見舞い申し上げます。
平成28年4月14日と16日に熊本県を襲った大地震で、私たちは多くのものを失うと同時に、学ぶこともできました。
その一つがボランティア精神と言えるでしょう。全国、いや全世界からたくさんの救援物資と共に、復興を志す私たちの力になるべく、たくさんのボランティアの人たちが熊本を訪れ、そして力を貸してくれました。また、被災当初からボランティアに携わった生徒の皆さんも多かったと思います。
「学ぶ」という語の語源は「まねぶ」とはよく言われることですが、この後も私たちも自らに余裕が生まれた時に、困っている人の力になりたい、という気持ちが芽生え、ボランティアを志す人も出てくると思います。
被災当初から携わった生徒の皆さんはきっと気付いたと思いますが、ボランティアにも「作法」があります。ボランティアを志して、実行するために何が必要なのか。どういう知識が必要なのか。どんな行動が求められているのか。さらに、クローズアップされにくいことですが、実は「終わった後」も必要かつ大切なことがあります(俗にクールダウンと言われます)。
阪神・淡路大震災、東日本大震災を経験した私たち日本人は、多くのものを失いながらも、災害救援ボランティアのノウハウをその都度学んできました。そして防災意識の高揚をはじめとして、多くの教訓を得てきました。
このページはそうしたボランティア活動に携わるために必要な知識をまとめたものです。
このたびの大災害に遭遇した私たちは、そのノウハウを十分に生かしながら、ボランティアに携わることで、さらに未来へ向けて豊かな示唆を子孫に伝えていくことができると思います。
先達が、私たちにしてくれたように。
平成28年 5月 生徒部
ボランティアは大きく分けて三つの段階で構成される
ボランティア活動は以下の三つの段階で構成されます。
- 「ボランティア、やろう」と考えること(計画)
- 行動に移すこと(実行)
- 自分の活動を通じて感じたことをまとめること(振り返り)
1 計画
ボランティア活動をしようと思ったとき、まずどのような活動があるかを知る必要があります。ちょっとまとめてみました。
- 【災害後1ヶ月程度の活動例】
- 避難所の手伝い
- 湯茶の提供、炊き出し、子どもの遊び相手、話し相手、物資の運搬、情報の張り出し、休憩所の設営、集会所の設営など
- 救援物資の仕分け、配送
- 安否確認のための訪問
- 引っ越しの手伝い、荷物運び、水汲み、部屋の後片づけ、家具の移動、ゴミ出し、障がいのある方の送迎、生活情報の提供
- 高齢者などの買い物や通院の付き添い
- 営業している店舗や浴場、公共施設の情報提供
- 遊び場や遊具の設置、子どもの一時預かり
【災害後2ヶ月~6ヶ月の活動例】
- 引っ越しの手伝い、荷物運び、掃除、簡単な部屋の模様替え
- 安否確認のための訪問
- 障がいがある方の通勤や通学の介助
- 障がい者、高齢者などの買い物や通院の付き添い
- 避難所の手伝い(子どもの遊び相手、勉強相手、行事の手伝いなど)
- 趣味活動や娯楽の手伝い
- 集会場所の設営や簡単な行事の企画、実施
- パソコン通信、インターネットなどコンピュータの操作
- アマチュア無線
- 外国語通訳
- 広報紙づくり、情報収集
- 会議や交流会の運営
(参考)災害時に必要とされるボランティア(熊本市社会福祉協議会のサイトより)
いかがでしょうか。「私にはとても…」と思った人もいるかもしれません。でも、いいんです。被災地に行くだけが災害救助ボランティア活動ではないんです。義援金の募集に応じることや支援物資の送付、被災地の農産物を買うという支援の方法もあります。特に大災害は長期にわたる支援が求められるため、こうした後方でできる支援を多く考えていくことが必要となります。だから、「自分にできること」を考えるといいと思いますよ。
2 実行
さて、ボランティア活動を行うことになった場合、まず準備が必要です。どういったものを準備する必要があるか、以下のリンクを参考にして欲しいと思います。
- 災害ボランティア活動の基本的な装備について(東京ボランティア・市民活動センターのサイトより)
- 活動を希望されるボランティアの皆様へ あらためてのお願い(熊本市社会福祉協議会のサイトより)
さらに、ボランティア活動を行う前に「ボランティア活動保険」に加入する必要があります。以下のリンクを参考にして下さい。
- ボランティア活動保険とは何か(全国社会福祉協議会のサイトより)
- ボランティア保険の御案内(熊本県社会福祉協議会のサイトより)
- 災害ボランティアガイドブック(熊本市社会福祉協議会のサイトより)
さて、ボランティア活動を行ってくれる人材をどの自治体が募集しているか、ということですが、以下のサイトを参考にして下さい。
上記サイトのリンク先でボランティアの集合時間、集合場所を確認の上、準備をきっちり行った上、当該場所に余裕を持って集合しましょう。そのあと、係員の案内のもと、活動に従事する場所へ移動します(移動に関しても指示があることでしょう)。
仕事に従事する際、心に留めておいて欲しいことがあります。
- 復興の主役は被災者である
復興する主体は被災者です。ボランティア独自の判断でさまざまな支援活動を展開するのではなく、被災者の声を聞き、被災者と一緒に進めていくプロセスこそが重要です。被災地の環境や被災者の立場も様々ですので、不用意な発言をつつしみ、自分の経験による判断を押し付けることなく、被災者の気持ちや立場に配慮した支援を心がけることが大切です。支援は、受ける人々の人種、信条あるいは国籍などに関係なく、いかなる差別もなく行われなければなりません。 - 受け入れてもらっていることに感謝する
現地の人たちがボランティアを受け入れてくれたおかげでボランティア活動ができていると感謝して活動しましよう。 - 被災地での緊急連絡先・連絡法を確認する。
あわせて地理や気候など周辺環境の把握も大事です。 - 無理はしないで自分にできる範囲の活動を行ってください。
休憩を心がけましょう。無理な活動は、思わぬ事故につながり、かえって被災地の人々の負担となってしまいます。自分の健康状態や疲労度に関わりなく活動を行うのではなく、活動時間を決めてこれを遵守する事が大切です。 - 被災した方々の気持ちやプライバシーを尊重しましょう。
マナーある行動・言葉づかい──自分から自己紹介をしましょう。写真撮影はひかえましょう。 - 分からないこと、困ったことは災害ボランティアセンターに尋ねましょう。
- 被災地でのボランティアとして基本的なマナーを守りましょう。
・ボランティアだからといって、好き勝手な行動はできません。責任を持って自分の役割を遂行しましょう。
・被災者の立場をできるだけ理解し、自分の判断を押しつけるようなことを避けましょう。自分だけの思いこみで勝手に行動しないことが大切です。
・一つひとつ指示を待つのではなく、自分の役割をよく理解し行動することが必要です。自分のできることを見極め、例え被災者に頼まれても、自分や周囲を危険に巻き込むような仕事は引き受けないようにしましょう。
・被災地や被災者に負担をかけない、自己完結であることを原則としましょう。
・自分が被災地にいることを十分認識し、言動に注意しましょう。 - 必ずメモを持ち歩き、常に新たなニーズなどを書きとめ、活動に変更が求められる場合には、活動のリーダーや災害ボランティアセンターに、報告、連絡、相談を心がけましょう。
- 被災者との関わりをはじめ、多くの人間関係の中で、様々な思いや課題を自分だけで受け止めてしまうのではなく、ミーティングなどの場でできるだけ報告するようにしましょう。仲間とよく話し合い、一人で仕事を抱えこまないようにしましょう。
(参考)学生災害ボランティア活動の心得10か条(早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンターのサイトより)
3 振り返り
例えば部活動等で運動するときも「準備運動(ウォームアップ)→プレー→整理運動(クールダウン)」という流れで行うと思います。ボランティアも一緒です。ボランティア活動にも、クールダウンが必要なのです。以下のことを確認して下さい。
- 自分が持ち込んだゴミは必ず持ち帰りましょう。被災地域に負担をかけることは絶対に避けましょう。
- 被災地では自分が思っている以上に疲弊しています。帰郷したらゆっくりと休息をとりましょう。
活動現場から帰宅の途につく前に、一日の活動を仲間同士で振り返って話し合うなど、自分がどれだけ大変な活動に取り組んだのか、疲れているのかを自覚できる時間を持ちましょう(クールダウン)。 - 活動中に知り得た個人情報などをむやみに公開しないこと。被災地の現状や自分の行った活動、出会った被災者の方との思い出を発信したいという気持ちはとても大事ですが、被災者の中には「自分の家の被災した状況を外に出してほしくない」と、ボランティアを頼むことさえ躊躇する人もたくさんいるのだということを忘れないようにしましょう。
- 帰郷しても、理由もなく興奮状態が抜けない、夜眠れないなどの症状が出た際には専門家を受診しましょう。
いかがでしたか。ボランティア活動の現場は生徒の皆さんが高校生だからできることがある、という意味合いを持つ場面であるとともに、社会を支える大切な自立(自律)した一人であることを求めてくる場面であるとも言えます。だからこそ予め保険に入ったり、危険を十分に避けながら行動する(リスク・マネジメント)ことが求められるというわけですね。
当然、未成年である生徒の皆さんは保護者の方の許可なしにはそうした場面には立ち会うことはできません。ボランティア活動に従事するにあたっては、必ず保護者の方の許可のもとに行うようにして下さい。