告 辞
第五十四期三六七名の卒業生の皆さん、卒業まことにおめでとうございます。教職員一同、皆さんの卒業を心よりお祝いします。本日は学校法人熊本学園より理事長の岩野茂道先生、熊本学園大学学長の幸田亮一先生、奨学会より会長の守谷光弘様、紫紺会より会長の木下顕様を初め多数のご来賓、保護者の皆様のご臨席をいただき、このように厳粛に、また盛大に卒業式を挙行できますことは私どもにとりましてこの上ない喜びでございます。
さて、卒業生の皆さんは覚えているでしょうか。三年前の入学式のことを。とても緊張した面持ちでこの同じ式場に入場してくる皆さんの初々しい姿が私の記憶に鮮やかに残っています。私にとっても本校校長として初めての入学式を迎えることになったあの日、皆さんが緊張していたのと同様に、いやそれ以上に私は緊張していたのではないかと思います。それだけに私は本日の卒業式にひときわ感慨深いものを覚えます。
卒業生の皆さん、今、皆さんの脳裏に浮かんできているものはなんでしょうか。一抹の不安を抱いて臨んだ入学前のスプリングキャンプのことでしょうか。それとも本校でもっとも晴れやかなイベントである紫紺祭でしょうか。いや、想像するに、皆さんの脳裏には入学以来これまで皆さんが経験してきたさまざまな喜びや悲しみが今去来しているのかもしれません。本校での三年間、二度と帰ってくることのない三年間。帰ってこないがゆえにこの上なく貴重な三年間の高校生活を皆さんは今終えようとしています。
三年前の入学式で、私は皆さんに対して何事にも恐れることなくチャレンジする気概を持って欲しい言ったことを今も覚えています。その際、チャレンジという言葉には「困難な課題」とか「試練」といった意味も含まれており、だからこそチャレンジ、言いかえれば挑戦のしがいがあるんですよとも皆さんに言ったと思います。
皆さんはこの三年間、一所懸命努力し、さまざまなことにチャレンジしてきたのではないでしょうか。期待通りの成果が得られた人もいるでしょう。なかには思うようにいかず、悔し涙を流したり挫折感を味わった人がいるかもしれません。たとえ結果はどうであれ、本校での三年間の経験はこれからの皆さんの人生にとってかけがえのない貴重なものになると確信しています。
ところで、私が最近見て大変感動を覚えたあるテレビ番組をここで紹介したいと思います。それは平均年齢七十五才という人たちが、その名も埼玉ゴールド・シアターという素人劇団を結成し、パリの有名な劇場での公演を実現させるまでの軌跡を追ったものでした。
なかなか覚えられないセリフ、ふらつく足許。ままならない舞台稽古。はじめのうちはパリ公演があまりにも無謀な計画のように私には思えました。しかしかれらは決してあきらめません。自らの可能性を求めてやまないかれらの悪戦苦闘ぶりを見ているうちに熱いものがこみあげてきました。
そして迎えたパリでの公演は大成功でした。目が肥えているはずのパリッ子たちは総立ちになり、拍手喝采、まさにスタンディング・オベーションです。このときにの最高齢者は何と九十才の女性でした。彼女は九十才にして見事に夢を実現し、花を咲かせたのです。彼女のまるで少女のように輝く目と満面のほほえみを見ながら私が改めて思ったのは、夢を持ち続けること、夢に向かって努力すること、そして飽くなきチャレンジをしてゆくことがいかに大切かということでした。
卒業生の皆さん、皆さんは今まさに新たな世界へ飛び立とうとしています。どうかいつまでも夢を持ちつづけてください。そして自らの能力や可能性に限界を設けたり蓋をするようなことは決してしないでください。皆さんのうちに秘められた能力を可能性をかたく信じて人生の最後の最後まで果敢にチャレンジし続けることを私は切に願っています。皆さんの健闘を祈ります。
最後になりましたが、保護者の皆様、お子様のご卒業まことにおめでとうございます。心よりお喜び申し上げます。わずか三年間のお付き合いでしたが、この間私どもの教育活動そして運営に対し、多大なご支援をいただきました。謹んでお礼を申し上げまして私の告辞とします。
平成二十七年三月三日
熊本学園大学付属高等学校
校長 木下 隆雄
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